虹ヶ咲2期1話『新しいトキメキ』感想 - 二項対立が提示された1話
早いようで、実際早かった虹ヶ咲2期1話が放送されましたね。2期でやっていく様々な問題を提示してきたとは感じましたが、それらがどういう展開をしていくのかが全く分かりませんでした。何も分からないアニメを見てるときが一番幸せ。
2期放送前夜に投稿した予想記事も全く見当外れなものになりそうでもうワクワクしっぱなしです*1。
ツイートに付けたタグ「#新しいトキメキ」は虹ヶ咲単話感想タグで、以下に掲載するツイートのルールに則っています。僕はまだ見られていませんが、このタグで検索すれば色々な人の感想が読めると思います。
【虹ヶ咲の感想ブログ書く人】
— 生春 (@Time_mrsi) 2022年4月2日
感想記事を読みやすくするために話数タイトルでのタグ付けをしてもらえたらありがたいです。
タグ付けルールは画像参照で、第1話は「新しいトキメキ」なので #新しいトキメキ、第2話は「重なる色」なので #重なる色 になります。
(画像は一期時のタイトル) pic.twitter.com/JgQvcPIuTW
では、本題に入ります。予想記事では階段を一歩ずつ登っていくように、破綻のなさそうな展開を書くように心がけていましたが、単話感想はとりあえず思ったことを書くフリースタイルでいきます。
1. いくつかの二項対立が提示された1話
2期1話の感想は本当に「分からなかった」へ集約されてしまうのですが、それで終わっていてはせっかくリアルタイムで視聴しているのにもったいないですよね。考えられそうなことを些細なことでもいいから考えてみましょう。
1期の例を見れば2期1話はこれからやっていく問題を提起していると読むことができます。実際に、既存の同好会と対立する考えが複数登場しています。
②応援する侑、される同好会 ↔ 一人でやっていくランジュ
③やりたいこと ↔ 適正があること
これらがどう折り合いを付けていくのかが2期になるのでしょうか。
2期1話時点ではR3BIRTHの3人がどういう人物造形になるのか分からない部分もあったので、スクスタの方から補完をして書いています。
1.1 一人一人のファンを大切にする同好会 ↔ ファンを自分色に染め上げる対象として見るランジュ
まだ劇中でも言及されていなくて弱いラインですが、ここも1つ同好会とランジュのライバル関係の原因にあるかもしれません。
まず同好会。1期のスクフェスでファン一人一人の要望を聞いて、それら全てを叶える姿勢をとった同好会という見方は改めなくて大丈夫だと思います。後者についてはまだ何とも分からないものの、自分中心にファンと一線を引いてスクールアイドルをやろうとしているようです。
ファンを個人の集合と捉えた同好会と、染め上げる1つの集団として見ているランジュみたいな対立構造が生まれたりするのかな。変に難しく考えず、単純にファンを大切にしているか否かの話かもしれません。
ランジュがファンをどのように捉えているのかは未だ分からずですが、彼女が言っていた「トキメキを与えるだけでいい」。これは、1期でスクールアイドルがファンにトキメキを与え、応援する存在だと言っていたのと差異があります。ファン ⇨ スクールアイドル 方向の矢印に否定的なのは明らかですが、 スクールアイドル ⇨ ファン の矢印も同好会とは違ったスタンスを持っていそうです。
ファンに対するスタンスの違いが応援される同好会か、一人のランジュかに繋がっているのでしょうか。そもそも、ランジュは基本的に完璧な人間なのでファンの応援を必要としない面もありますが。
鍾嵐珠ちゃんのEutopiaの歌詞これだと思う
— miu (@ting_KOHIRA) 2022年4月2日
間違いところあるだと思うけどね… pic.twitter.com/NxzcrZtBaz
皆さんのご指摘をもとに訂正しました。
— りんりん🇲🇾翻訳あり〼 (@97hayashi) 2022年4月2日
ありがとうございました。
※日本人の中国語教育を考慮し「簡体字」で書きました。決して深い意味はありません。
※「もまんたいら」は少し特殊な漢字を使うため入力が難しく、仮名で記しました。 pic.twitter.com/BmK2RnzWyx
中国語が分からないので、Twitterに耳コピ歌詞を上げている方のものを参考にしました。いや、インターネットってすごいですね…。
1.2 応援する侑、される同好会 ↔ 一人でやっていくランジュ
ランジュは個として完成されているから他人を必要としないのもそうですが、自分のやりたいことをやって、表現できればそれでいいのかもしれません。彼女は同好会というより、そういったことを出来る場であるスクフェスに憧れて日本までやってきました。言ってしまえば、スクールアイドルすらスクフェスに出るための手段程度にしか考えていないかもしれません*2。自分に絶対の自信があるからこそ観客からのフィードバックを必要としていないのでしょうか。
それならば今後のことを考えやすいです。彼女が真にスクールアイドルになるまでの過程が描かれるでしょう。これが描かれるとすれば、ランジュがまだ同好会に入れないけど、将来メンバーの一員に迎えられることに不自然さはありません*3。なぜなら、彼女はまだスクールアイドルではないから。侑がときめかなかったのもここに原因があると見ることもできます。
ただ、個人的にランジュの在り方も魅力的で、否定されてほしくないものです*4。アニガサキのような全てを包み込むアニメが今のランジュを否定するかは分かりませんが、少なからず意識の変革を求めるのではと思っています。ランジュが今のスタンスを捨て、同好会が持つスクールアイドルの思想に身を染めるかどうかも気になるポイントですね。
1.3 やりたいこと ↔ 適正があること
栞子に関してはまだほとんど人物像が開示されていないので、スクスタを参考にします。それで、彼女の最たる特徴と言えば「その人の適正を重んじる」になるでしょう。
栞子はスクフェスの話を聞いて「みんなの夢を叶える場所、素晴らしい理念だと思います」と同調しているように見えますが、同好会と見事にぶつかっていますよね。やりたいことを叶える同好会流か、適正を見抜き適切なアドバイスを与えることで導く栞子流か。スクスタの情報を拾っているから、あちらと話の流れが重複するような想像ばかりしてしまいますね。
栞子に関して言えば、せつ菜も気になりますよね。さっそく2期1話では同好会と生徒会でやりたいことが中途半端になっている様子が描写されていました。やりたいことが2つある人物として侑と重なる部分があるので、1期のように終盤で侑をリードする存在になるかもしれません。
2. Eutopia
ランジュの凄さを印象付けるシーンとして見入ってしまいました。ライブ前の緊張感のある劇伴もそうだし、口上も何言ってるか分からないけどかっこいいし、曲もいいし、MVもかっこかわいい。
世界がライブステージに変容していくところ、めちゃくちゃかっこよくないですか?観客の見ている世界を強制的に自分色にしていく力強さを感じます。
2.1 目につくのは鳥かご
さて、今回のモチーフはなんでしょう。Dream with Youが不思議の国のアリスだったようにEutopiaもまた何かあるのでしょうか。
目につくのは鳥かご・電車・水槽と自分を閉じ込める、あるいは規定するものです。ランジュ自身が鳥かごに入っていたり、鳥かごに囲まれていたり示唆的です。ランジュが閉じ込められているのは、素直に見れば自分を縛ってきた環境や、色のついていない大人たちなど、暗い過去を連想させます。
また、檻に囚われず自由に泳ぐ魚や、宙を泳ぐ魚も気になりポイントです。
対して彼女を囲む鳥かごはなんでしょう?ランジュにとっては自分以外の人間が縛られているように見えるのでしょうか。もしかしたら同好会のことをそう捉えているのかもしれませんね。互いが互いを応援しあい、依存し会う関係は、一人で生きているランジュにとって不自由に映っても不思議ではありません。
それで、上に載せた有志の耳コピ歌詞を読んで思ったのは、やっぱりランジュは"一人"というより"孤独"な印象を受けます。「孤城」なんて言葉を使っているんだから、ランジュが孤独な人間で、これからいい方向(同好会に属する)へ向かっていくんだろうと考えてしまいますよね。もしかしたら、鳥かごもランジュの孤独さを象徴しているのかもしれません。
核心的なところは何も分かりませんが、今後これらの暗喩に込められた意味が明らかになっていくことを考えると楽しみですね。
2.2 荒唐無稽な話をしよう
Eutopiaについて続きです。上に書いたことを一回忘れてください。関係ない話になります。
そもそもEutopiaってなんでしょう。ユートピアと聞いて真っ先に連想されるのは牧歌的な雰囲気を持つ楽園です。しかし、自分が持っている知識だけを信じるのは足元がおぼつかないので、Wikipediaでもいいから調べてみましょう。
これを読んで驚いたのは、ユートピアが政治的な文脈から生まれた言葉ってことです。以前にも何かで聞いた気もしますが、すっかり忘れて今回新たに知った事柄です。もっと読んでみると
・現実には決して存在しない理想的な社会として描かれ、その意図は現実の社会
・eu- (良い)と言う接頭語もかけて「素晴らしく良い場所であるがどこにもない場所」を意味するものであったとみられている・「ユートピア」には格差がない代わりに人間の個性を否定した非人間的な管理社会の色彩が強く、決して自由主義的・牧歌的な理想郷(アルカディア)ではない
などなど、気になることがたくさん書いてありますね。
ランジュがそのパワーで観客を強制的に染め上げるのだとしたら、管理社会という言葉も当てはまりますね*5。そこには観客の個性も何もない。ファンを個人の集合として見ない(大切にしない)姿勢の現れ。他人が全て同じに見えているのもそのせい?
ランジュが作りあげる自分色に染まった最高のステージ。これこそ「素晴らしく良い場所であるがどこにもない場所」を指しているのかもしれない。
対になる概念としてアルカディアも挙げられていて、あえて「ユートピア」を選んだ意味もありそう。もうめちゃくちゃ言っちゃうと、スクフェスこそがアルカディアなのかも。
それと、中国の風水では鳥かごって幸運を呼ぶアイテムらしいです。ランジュの鳥かご――ステージの中で幸せに管理されなさい(夢中になりなさい)っていう暗喩なのかも?
などと、①ランジュが観客を染め上げようとしている②ランジュが観客を大切にしていない③Eutopiaの命名者について無視している 等々の早計な決めつけや、雑な話運びであるものの、2期1話時点で抱いた正直なイメージなのでここに残しておきます。
(4/4追記)
同好会とランジュの違いについて考えていたら、単純に目線の高さが違うことに気づきました。同好会とファンは常に同じ高さの目線にいますが、ランジュはEutopiaの歌詞を見ると常に高みからファンへトキメキを与える立場にいます。高みにいるランジュにはファンのことなど見えず、没個性で一様な集団に過ぎません。
高い場所からトキメキを与えて夢中にさせるライブ――これがランジュを取り囲む鳥かごなのかもしれません。「私がトキメキをあげるからそれに酔いしれなさい」と言わんばかりな彼女の言動とEutopiaですが、これこそが鳥かご。ランジュの支配する(管理された)ユートピアの中で幸せになりなさいというメッセージ。
3. 侑のこと
侑とぶつかるキャラクターとしてランジュが出てきたのは面白いですよね。スクールアイドルをやりたいと思ったから海を超えてきたランジュが、真剣に夢を追い求めることを説くのは説得力があります。しかし侑は同好会で夢を叶えたいと欲張りにも聞こえる回答をする。
どちらかが正しいと証明されるのか、それとも両者の考えが変化するのか。はたまたどちらの道も肯定するやり方をするのか。私は以前書いた予想のように、やりたい気持ちを否定しないアニガサキなら侑は同好会も夢も両立させてしまうんじゃないかと思います。ただ、現時点で赤点をとっている侑に説得力がないのが問題で…。あとあのシーン、ノベルゲームで選択肢を間違えたときのような妙に引っかかる雰囲気を醸し出していたのも気になります。気のせいでしょうか?
いずれにしても、1期と話の構造が同じなら1話のこのシーンは終盤の答えになっているはずです。それがどういう形での回収になるのか、注目ポイントです。
個人的にはランジュの在り方さえも正解の1つだという着地が見てみたいかもしれないです。自らのやりたいことをやる、同好会という入れ物は無限に広い懐を持っていて、どんなスクールアイドルだって受け入れられるんだから。
今回提示されたのはスクールアイドルとファンの関係性について再度問うお話だということだと思います。スクールアイドルは本当にファンから応援される存在なのか?夢を与えるだけの存在なのか?トキメキを与えられ、夢を見つけたファンはどうするべきか?どんな回答が下されるのか気になるものばかりですね。
4. 夢が僕らの太陽さ
この曲、最終話の後に聴いたらめちゃくちゃ泣いちゃうんじゃないでしょうか。
ED映像は今期もめばちさんによる素晴らしいイラストの数々で、気になるところが多いです。
芽吹いた種に水をあげるスクールアイドルたち。トキメキを与える行為が種をまくことに当たり、水をあげることが応援することに当たるのでしょうか。花を咲かせるのに必要なのは、スクールアイドルの応援と夢そのもの、みたいな…?水をあげる際に虹がかかっているのも示唆的なように感じます。
別々の方を侑と同好会。何となく思うのは、2期は侑が同好会から独り立ちするお話なのでしょうか。上に書いたこととまるっきり矛盾しますが。個人的に、両者がお別れをして、Hurray Hurrayで刺されたいって欲望が少なからず存在します。
ただ、侑と同好会がお別れするまでのロジックが分からないです。上述した「同好会も続ける・夢も追い続ける」、この結末なら「やりたい気持ちを否定しない・支えあえる仲間がいる」あたりから説得力を持たせられるんですけど。キャパシティを超えてどちらかを選ばざるを得ないようなネガティブな状況しか想像できません。う~~~~ん、考えることが多すぎて本当に楽しいです、今。
5. おわりに
2期1話、本当に分かんね~~~って思いながらも気になる点を書いてきました。自分でも線が繋がってないことを言っている自覚があります。でも、こうやって1話ごとに与えられる情報から色々考えることこそがリアルタイム視聴の楽しみです。暇があったら毎週こういうのアウトプットしたいな。
侑と同好会、あとランジュにミアと栞子も。それぞれがどんな道を辿っていくのか楽しみでしょうがありません。またこうやってアニガサキに狂える3ヶ月が始まった。それを実感できる2期1話でした。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会"性"担当の鐘嵐珠です。